手術(オペ)の種類 1

リンパ節も腫れていないし、PET‐CTで集積もないのでのでオペになりました。肺癌の標準的なオペは肺葉切除と(系統的)リンパ節郭清です。少し解剖の話になります。肺は心臓の両側左右にありますよね。心臓は少しだけ先端が左に突出してますから、その分左肺は右肺より小さいんです。右は上、中、下葉と3つに肺葉が分かれています。左は上、下葉と二つです。肺癌ができる場所で切除する肺葉は当然異なります。つまり上葉に癌ができれば上葉切除、中葉にできれば中葉切除が基本です。よく手術説明時に患者さんから聞かれるのは、「えっ!こんな多く肺を取るんですか!?」という言葉です。「癌のあるとこだけをちょこっととれば良いのだと思っていた。。。これだけ取っても息ができますか?」というものです。詳しい説明は省きますが、まず癌のところだけとるというのは肺部分切除という手術方法です。この手術だと毛細血管やリンパ管にあるがん細胞を、切除していない肺に残してしまう確率が高いのです。肺葉はそれぞれ胸膜という膜で包まれています。その中に血管、リンパ管、気管支が詰まっています。血液や、リンパ液は動いていますので癌細胞がこれらに入り込んでいたら広い範囲で存在(STAS)し、部分切除では不十分で、手術の後でまた再発してくる可能性(断端再発)があります。だから胸膜ごと塊でとる必要があるわけです。かなりの早期の肺癌、いわゆる肺胞上皮癌と呼ばれるスリガラス陰影のものであれば、部分切除でも癌は全て取り切れますが、存在している場所によっては肺葉切除しないと取り切れないことも稀にあります。肺を切除した後は残っている肺葉が伸展して、呼吸機能はだんだん改善してきます。肝臓のように細胞の再生(増える)はありませんが、肺はスポンジみたいな組織で、機能の再生は正常な肺では必ずあります。手術前よりも呼吸機能が改善する人すらいます。ただ喫煙を長期にされているような肺は肺が綺麗なスポンジでなく、ぼろぼろの使い古したスポンジみたいになっていて機能の改善は望めません。だから、呼吸機能の悪いこういった人には肺葉切除を避けて再発の可能性が上がっても肺部分切除や区域切除などを選択することもあります。

私のいつもの説明はこうです。中に上等な紀州の梅干しを入れたおにぎりが、あなたの肺癌。またコンビニで買うような安いカリカリの梅干ししか入っていないおにぎりが早期の中の早期の肺癌。赤い染色(汁)は癌細胞だと思ってください。ごはんに汁がしみこんでるのは上等うめぼしのおにぎりの方でご飯を食べても食べても赤い汁がお米についてますよね。でもカリカリの梅干しはほとんどしみこんでません。赤い汁をご飯に残すとその汁はまた梅干しになります。つまりちゃんと包まれた海苔(胸膜)ごと食べないと再発の危険性が高まるんです。また呼吸機能は普通の人であれは片肺全部切除しても日常生活は可能です。そこまではとりませんが。とった後のスペースは残した肺が膨らんできて細胞再生は無いですが機能再生はあります。

 

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  手術(オペ)

そして肺癌の手術(オペ)を行うことに。肺癌でオペができるできないとはどういうことなのでしょう。一般的に元気な人ではステージという進行度の具合でオペをするかどうかを決定します。I期からIIIA期の比較的早い段階ではオペが可能なんですがIII期でも腫脹リンパ節がごろごろあるとき(Bulky N2)は通常はオペしません。初めに化学療法をしてからオペするのが普通です。なぜオペしないのかというとオペしてもしなくても予後が変わらないとこれまで言われてきたからです。しかし、長年臨床に携わってきて、III期以上、IV期でさえもオペで肉眼的に根治的にきっちり切除できれば癌の再発無く長生きされる人も少なくありません。また、最近の目を見張るほどに発展した化学療法、分子標的剤、免疫治療などにより、本当にオペした方が良いのかしない方が良いのかはわかりません。これは現状存在する統計学上の臨床試験のエビデンスに基づいているわけであり、現代の進歩した治療を含め、患者さん一人一人病態や背景が異なるので一概には優劣が言えないわけです。では、オペするかしないかは微妙な病態の時はどちらになるのでしょうか?通常はそういう過去のエビデンス(論文)を患者さんに提示し、よ~く説明して決定してもらうというのが理想でしょう。でも、専門家でないなら普通は十分な理解は無理ですよね...理想と現実は異なります。エビデンス的にはAの治療選択が普通なんだけど、当然Bを選択することもあります。それは例えば患者自身の強い意向があったときや、その治療を開始しても耐えれるだろうかと思うとき等です。なんでもかんでも、この治療は絶対とは言えないので、そこは医師と患者との話し合いです。極端な例ではステージIV期でも手術をすることもあります。現在のガイドラインからは完全に外れた治療です。もちろん術後治療は必要ですが、そういう治療で何人も再発なく長生きされている患者さんもおられます。毎年ガイドラインが発表されて推奨される標準的な治療はこうですというのはある程度はわかりますが、当然ガイドラインでは示せないような治療もあります。これら病態に対しては病院はCancer Boardという名の下に外科、内科、放射線科、病理科などあらゆる科の医師が集まりDiscussionします。すべてガイドラインに書いてある治療を機械的に行うだけならば、こんな楽な仕事はありません。それこそAIに仕事を取られそうです。

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気管支鏡検査か胸腔鏡手術か

肺癌のステージを見るためにはPET‐CT(Positron Emission Tomography。ポジトロン・エミッション・トモグラフィー)検査も行います。この検査は癌細胞がブドウ糖を取り込みやすい性質を利用した検査です。微量の放射性物質(18F-FDG)をブドウ糖にくっつけて血管内に流します。癌細胞が18F-FDGを取り込むとコンピューターの画像の上で光ります。ただし、この検査で光ったといっても必ずしも癌であると断定はできません。肺結核や肺炎など感染症や良性疾患でも18F-FDGを取り込みます。また癌細胞の密度の低い早期肺癌などでは癌であるにもかかわらず細胞数が少ないのであまり光りません。

この検査は遠隔転移やリンパ節転移の有無の診断に力を発揮します。リンパ節が腫れてなくても光ることも当然あります。よって転移が疑わしいと予想できます。なお、PETは脳、心臓、腎臓、膀胱などでの悪性腫瘍の診断には不向きです。

CTやPETでかなり肺癌の確率が高くなったわけですが、確定診断(細胞病理学的検査)はまだです。ここで通常、呼吸器内科医は喀痰細胞診とか気管支鏡検査による経気管支肺生検 (TBLB)などによって腫瘍の一部を採取して組織を確かめます。ただし、気管支鏡検査で採取が困難な場合やほぼ間違いなく肺癌だろうという場合は、その病理検査はすっ飛ばして手術をします。

この手術は、現在胸腔鏡手術という内視鏡手術が一般的です。つまり胸部に1~数カ所の穴(2-3cm)を開けて胸の中が映し出されるモニター画面を見ながらするものです。患部を切り取って、すぐに病理検査に出し肺癌と確定診断を得たら引き続き手術を継続してもう少し大きくとったり、リンパ節を郭清したりします。

*ポイント  気管支鏡検査での経気管支肺生検の成功率は病院によってまちまちです。大きな腫瘍なのになんで診断つけれないんだというような技術的に乏しい呼吸器内科医もいるので注意しましょう。特にどっちみち手術が必要なのであれは気管支鏡検査はすっとばしても良さそうですが、手術前に気道内腔に何もないことを確認することは一定の意義はあります。しかし末梢性(心臓から離れた肺の外側)の肺癌の場合は普通何もないことが多いです。また、気管支鏡検査はちゃんと鎮静剤を入れないとかなりつらい検査です。咳は出るし息苦しい。だから、どうせ手術が必要であるなら経気管支肺生検目的の長時間のこの検査は個人的には避けても良いように思います。

 

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肺の陰は一体何なんだ!

胸部CTを撮影して腫瘤は肺癌の疑いがかなり高いことがわかった。どうも白っぽい陰影はゴツゴツして2cmくらい直径があるらしかった。薄い影はないと言うことだった。またリンパ節の腫れは無かった。空洞も石灰化もなかった。

*ポイント 肺癌の場合、陰影はかなりの確率で楕円であり、notch signといわれるゴツゴツした辺縁を持つ。放射状陰影、いわゆるspicularという形状も見られる。リンパ節の腫れがなかったということは短径が1cmを越えていなかったと思われる。つまり手術前の診断としてはリンパ節転移は無さそうだということ。つまり早期肺癌の可能性が高い。

肺癌の陰は濃い影と薄い影が混在する。一般には中心部が濃く、辺縁が薄いのだが、この薄い部分は癌細胞の密度が低いためそんなに心配は無い。問題は濃い部分である。濃い部分が大きいと癌細胞の密度の高い部位が多いということになり進行している傾向があるといえる。空洞ができるのは扁平上皮癌というたばこに関与が強いとされている肺癌や肺膿瘍などの炎症背疾患がある。また石灰化は肉芽腫などの良性腫瘍が鑑別にあがる。

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