気管支形成術

呼吸器外科医にとって肺癌の手術で技術を要するものはいろいろありますが、その一つに気管支形成術があります。気管支形成とは気管支を切って繋ぎ合わせる手技ですが、肺癌の手術のほとんどが切って取り除くという手技、いわゆる切除することが多い中で、再建は稀な技術です。消化器外科や心臓外科では腸管や血管を繋ぎ合わせる再建は多いのですが、呼吸器外科では本当に少ないです。特に最近は太い気管支に癌ができる頻度が減ってきており、肺(葉)を取れば終わりのことが多いですね。気管支は血管に比べて硬い軟骨部分とペラペラの膜様部があるので繋ぎ合わせるのには多少のコツがいります。気管支形成の中でも特に気管分岐部(気管と左右の気管支の部分)の形成は数が少なく、技術的にも困難であり、手術したことがないベテラン医師も多いです。若手の技術教育ははっきり言って日本のどの施設でもできるというレベルにはありません。気管支形成は日本では多くの糸を使って1本1本結節で縫合(結節縫合)する医師が多いのですが、ドイツでは1本の糸で連続で縫合(連続縫合)します。私は分岐部形成では左気管支と気管、右気管支と気管+左気管支と2-3本使用した連続縫合をします。ドイツは日本のように検診システムがないので、早期肺癌の発見率が低く、気管支形成の手術が日本よりはるかに多いです。これは国民にとっては日本は素晴らしいといえますが、前述したように手術の訓練、練習という意味では寒いものがあります。しかし、最近は動画で手技を学べるので昔ほど心配しなくていいような気がしています。

米国バイデン大統領就任

第45代ドナルド・トランプから第46代ジョー・バイデンへと米国大統領が引き継がれた。(ドナルドダックから明日のジョーへ)バイデン大統領はトランプの政策をことごとく変更しており、地球温暖化のパリ協定やWHO脱退を停止した。コロナが蔓延する米国の死亡者は第2次世界大戦で戦死した人数くらいになっているという。恐ろしいことだ。トランプは自らマスクをせずコロナに感染しているが、リーダーがウイルス感染に対する予防策をとっていればここまで拡大しなかっただろうか?トランプのせいだという意見もあるが、それはわからない。現に欧州でもウィルスの拡大は大きい。しかし感染のスピードは減少していただろう。頼みはワクチンであることは周知の事実なのだが、本当に効果があって欲しいと願っている。

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手術(オペ)の種類3

早期の肺癌と進行期の肺癌とはどう違うのでしょうか?簡単に言うと一般にはリンパ節転移のない小型の肺癌が早期肺癌と呼ばれます。しかしリンパ節が腫れていなくて転移がなくても、隣接臓器への浸潤のある肺癌(T4)は大変です。例えば胸壁へ癌が直接浸潤していたり、心臓へ浸潤している場合などがあります。横隔膜や心臓と繋がる太い血管への浸潤などもあります。これらは癌の増大で命の危険が高いときは緊急手術を行いますが、肺尖部肺癌、いわゆる肺の頂点にあって天井の胸壁に浸潤しているパンコースト肺癌と呼ばれるようなものの場合などは最初に放射線治療や化学療法などを行います。心臓でも左房に浸潤している場合は左房合併切除で根治的な手術が可能な場合があります。この場合、肺は下葉切除かもしくは全摘になりますが、いずれにしても大手術です。大動脈の合併切除は予後の成績があまりよくない印象があります。これは人工心肺を用いるので癌の全身播種の可能性を指摘されています。しかし、いずれにしてもリンパ節転移が無ければ長期生存も期待できます。これは切除臓器に差はありません。ただし、縦隔リンパ節転移があった場合は、やはり一般には予後が悪く、手術適応は慎重であるべきです。縦隔リンパ節転移肺癌に手術を先に行い後で化学療法を行うか、それともその逆か、どちらが成績がいいのかは未だ結論が出ていませんが、リンパ節転移がないもしくは肺門に限局した肺癌では、少なくとも術前に化学療法を行うメリットは無さそうです。最近では免疫チェックポイント阻害剤を術前に投与すると切除した肺癌がかなりの確率で消失しているということが報告されました。よって術前免疫療法はかなり有望な治療になりそうですが、そういう使用方法はまだ薬剤添付文書上認められていません。