ドイツの医療保険について




ドイツでの保険は2種類に分かれています。これは公的保険にはいるの私的保険に入るのかという単純なもので無く、公的保険だけに入るのか、公的保険をやめてもっと手厚い私的保険にする(完全保険)のか、公的保険にプラスの形で私的保険を付け加える(付加保険)のかという形になっています。公的保険とはいえ、民間が提供する保険でこれだけは入っていないといけないという最低限のものです。公的保険を提供している民間の保険会社は多くあります。掛け金は、収入の多さによって変化しますが年齢や既往歴などは関係ないようです。私的(民間)保険は年収が6万6000ユーロ以上(838万円)の高給取りの場合(2021年)に入る事が可能です。私的保険の方が支払う掛け金は高いのですが、ではなぜこの保険に入るかにはもちろん理由があります。理由はいろいろですが、一言で言うとPrivat(私的保険)はVIP待遇だからです。また公的保険の患者だけの診療だけだと病院は破産するとも言われています。

私的保険に入りたいという理由は、やはりベテラン医師がより高度な治療をしてくれる可能性が高いということだと思います。大学教授クラスの診察が受けられる権利を持つ(普通は病院で診療してくれる専門医は指名できないし、毎回代わる。もちろん手が空いていれば上級医が診察可能なので運もある)のが大きいです。日本では教授と言っても臨床能力が必ず高いとはいえないとは思いますが、ドイツでは臨床能力はある程度担保されています。私の留学中、面白い光景を目の当たりにしました。私的保険の患者さんの麻酔についてです。つまり手術の時は、私的保険患者に対してはVIPですので、麻酔医も教授が気管内挿管するのが普通ですが、薬で眠らせるまでは教授が手術する患者に話しかけ、寝つけば別の麻酔医が気管内挿管していました。。教授は別の私的保険患者の麻酔へ。。。本音と建て前というか。。まあ、教授がうまいとは限らないしね。。。あと、私的保険患者の利点は診察での待ち時間が相当短いです。また、 国外でも加入した健康保険を使えるとか、加入者個人毎に、広い選択があり、柔軟な給付が受けられる。例えば歯科の補償なども可能です。                    一番私的保険でVIPぽいのは「プライベートの病室」が使用できるということです。一人部屋もしくは二人部屋 公的保険では”Mehrbett-Zimmer”(複数ベット部屋)が普通ですので。  しかし、公的保険でも臓器移植は受けることが出来ますが、基本的には長期の滞在VISAの無いドイツに一時的に居住する外国人は公的保険に加入できません。(日本では外国人は保険に入れます)

日本では個室代は自費で保険でカバーされていません。別に払わないといけません。当然保険がどのようなものでも基本的に医師を指名は出来ないです。5年目医師が手術しようが30年目ベテラン医師が手術しようが同じ診療報酬です。歯科はに日本では保険に最低限のは含まれていますが、良い歯を入れようと思ったら保険は効きません。プラーベート部分が大きいです。

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ドイツの手術3



ドイツ・フライブルク大学呼吸器外科の手術室には大きな窓があり外が見えるような構造です。これはハイデルベルク大学ではそうではなかったので、ドイツ全てでは無いと思いますが、初めてこの手術室に入ったときは衝撃的でした。日本の手術室はまず窓は無いです。手術室壁の外に通路がありそこに窓があることはありますが、これは窓があると術者が気が散るからか、耐久的なことを考慮してかなどは不明です。まあ、あまり外から望遠鏡で覗かれてもいやなんで守秘的な意味もあるのかもしれません。今や、日本でも窓がある手術室や、窓が無くてもビデオでタイムリーに家族に手術の様子を見せられるような構造のところもあります。また手術用具は以前にも言いましたが、ディスポ製品というものがかなり少なかったです。つまり日本で使用しているピーナツ(Topffer)などの類です。鉗子に綿球をつけるのが当たり前でした。綿球はサイズがいろいろありました。気をつけないと術野に迷入しますね。術衣も当然選択できる布のもので、大きいサイズしか無く、困るのが首から胸が大きく膨らみダブつくことでした。なんとか工夫しましたが。いかにコストを抑えるのかというのが手術の一つの命題になっていました。

 



ドイツでの手術2



しかし、ドイツでの手術が日本に比べて全てにおいて優れているかといえば、そうではないと思います。自分は外国かぶれではないので、そこは冷静に判断できます。ドイツでの病院、少なくとも大学病院はそれぞれの科がいうなれば独立した会社みたいなものです。教授が社長です。教授が医局員の給料を支払います。そして医局員も基本給は凄く安く、仕事した内容によって加算されていくというシステムです。第一助手1回いくらみたいな感じです。また、収支が厳格化されているので不要な検査は基本的に行いません。保険でカバーされるものだけです(ここは最近の日本も似ているが)。だから、CTやPETや採血や何もかも頻回には絶対に行いません。損するからです。安易に手術でもステプラーを使いません。ほぼ全て糸での手縫いです。糸(当時モノフィラメントは1本3000円。今はもっと高額)も何本も使うと大変高額になるので、1本の糸での気管支形成は連続縫合なのも頷けます。1本の連続縫合をスキルの無い医師が行うと気管支のカッティング(裂けること)からせっかくここまで縫ったのに全て台無しということにもなります。極力材料費を抑える意識が各医師は高いです。あたりまえです。そうしないと給料でなくなりますから。日本は民間病院ならそういう意識が比較的あるでしょうが、公的病院では材料費に関する意識はほぼありません。それは悪いことではなく、患者さんのために、自分のためにお金を気にせず好きなものが好きなだけ使えることが可能なのは良いことです。多く使うとレセプトで詳細記載が必要になりますが、あまり非常識な使い方でなければ、経験上はレセプトで撥ねられることは稀です。日本でも使用できるステプラーの本数が決まっていますが、上限以上使うこともやはり場合によってはあります。しかし、ドイツではそういう場合は手縫いします。日本は本当に恵まれているなと思います。ただ、懸念もあって日本の若い呼吸器外科医はシンプルな気管支や血管の縫合閉鎖も経験の無い人が多いです。便利なステプラーをもちろん使えば良いのですが、使えないときやトラブル時にはマニュアル手法を知らないとリカバリーできません。

ドイツでの手術1




ドイツでの生活は朝早くからの回診に始まって、手術手術手術も連続でした。なぜここまで手術するのか??ドイツでは手術した患者は別室で麻酔医が覚醒します。覚醒部屋があり、何人もの術後の患者さんが寝ています。で、手術が終わって空いた手術室にはすぐに次の手術患者さんが運び込まれます。だから、術者の休み時間は本当に短いです。日本では手術が終わった患者さんは手術をした部屋で麻酔医のもと覚醒します。それまで手術室は空きません。患者さんによっては覚醒が遅い人もいます。呼吸がなかなか強くならずに気管内挿管チューブがなかなか抜けない人もいます。覚醒後はその後ICU(集中治療室)なりRR(回復室)なりに麻酔医とともに連れて行かれます。当然、その間は手術室は空っぽです。そして麻酔医も外科医も休んで次の患者の手術室への入室時間を決めます。どうですか。。。この違い。縦で手術して麻酔主治医が一人づつと決まっているからでしょうか。ドイツでは手術室が空になる時間が極めて短いといえます。日本みたいにお昼だから1時間ランチタイム!みたいなことはしません。ランチタイムを各医師ずらします。なぜ?そこまでやる??それはまず第一に患者が多く1日の手術数を増やす必要性があること、そして手術を増やして利益を上げる目的を共有していること。(ドイツは手術すればするほど収入が増える。してもしなくても同じ日本とは根本的に異なる。)第3に効率よく仕事をすることで勤務時間を短縮させることが出来るからです。ほとんどの病院がそこまでする必要が無い数の手術なので、あまり問題にはなりませんが。ただ、働き方改革で帰宅時間を早くというのであれば、そういう改革は必要になってきます。しかし、基本、いくら効率良く仕事をしてもインセンティブがつかないのであれば、手術リスクだけ上がるので、麻酔医も外科医もmotivationはあまり上がらないでしょう。