手術での支持組織



これまでの高名な外科医は手術のときに重要なのは層の理解であると述べてきた。つまり血管、神経などの境界を理解し、残す臓器と残さない組織を明確にして剥離、切除しよというものである。切除する側の組織は支持組織(欧米では支持組織を指す言葉はない)・結合組織と呼ばれるものである。これはリンパ節郭清などでよく説明される伝統的な外科的重要事項とでも言うべきものだ。例えば、気管分岐部のリンパ節郭清を例にとると、臓側胸膜を剥離する、迷走神経を剥離する。気管支の縁を剥離する、気管支動脈を剥離切離する、心膜と結合組織の間を剥離する。などの操作で一塊に結合組織を切除するわけである。残った組織がつるつるぶらぶらなほど完成度が高い!という感じである。これは結合組織内にあるリンパ管やリンパ節を残さずに切離するという目的があって行われている。昔はこの操作を早期肺癌でもルーチンにされていた。局所に癌細胞を含むリンパ管やリンパ節を残しておくとそこから癌細胞が増殖して再発が起きることを防ぐためである。確かに外科医としては局所治療が手術の命題なのだからなるべく残したくはないのだが、それが本当に患者の予後をよくするのかどうか、さらにADLやPSにとって良いことなのかはいまだにわからないし、証明されていない(証明できないといった方が正解)。乳癌領域では郭清範囲が狭まっている。本邦では上葉の早期肺癌であれば気管分岐部リンパ節郭清は省略されることもあるから(選択的リンパ節郭清)昔ほどは癌の残存には臆病にはなっていない感はある。よく疑問に思うのは結合組織を全部切除して残存組織をつるつるにしていいものかということと、支持組織は物理的にそれなりの理由があって存在しているので、切除支持組織選択も考えながらしないといけないということである。リンパ節郭清の意義は物理的に癌細胞を取り除くということである。しかし郭清部分の辺縁に癌細胞があれば残すことになる。また、リンパ節転移のないリンパ節を切除するのは無駄以外の何物でもない。でも取らないとその判断、診断ができないから切除するわけである。その診断(微小なものは特に)は病理学的にしか現状無理である。つまり、リンパ節郭清がOSに与える影響はいまだに不明であるのに完成度を競い合っているという現状がある。昔東京のとある病院が普通の肺癌のリンパ節郭清で胸骨正中切開して両側の縦郭を鎖骨、頸部まで広範囲に行っていたのだが、その方法が一番予後が良いという結果にはならなかった。リンパ系での微小癌の残存がどの程度生存率に影響するのだろう。免疫チェックポイント阻害剤や分子標的剤が処方される現在、それが大きなものではないと考えてしまう私は外科医では少数派であろうか?


コロナ、コロナ、コロナとオリンピック



コロナの猛威はもうとどまるところを知りません。去年の今頃はさほど深刻に思っていなかったはずです。
その頃のコロナの認識は、風邪みたいなもので、かかってもある程度若ければ治癒する。ただ基礎疾患のある人や高齢者は注意した方がいいというようなものでした。欧州や米国と比較してもあまり罹患しない(罹患数は少ない)し、そんなに死亡する人も多くない。というような認識。。。また、そのことから日本人はもうすでにコロナへの抗体があるんじゃないかな。とか、日本人の遺伝子がコロナに感染しても軽症になる何かを持っているのではないかということすら言われてきて、なんか大丈夫じゃないかなという雰囲気はありました。(だからワクチン開発や確保が真剣でなかったのかとは言いません。)

人種の問題なのか。。?という疑問を持っていたのは事実なんですが、ただおかしいなと思ったのはコロンビア大学の加藤友朗先生の情報でした。加藤先生は門外漢の私ですら知っているくらいの、外科医なら誰もが知ってるくらいの名医です。東京大学薬学部、大阪大学医学部を卒業後、市立伊丹病院で研修。95年渡米。米国で脳死ドナーからの肝臓および小腸の移植手術を行っていましたが、最も注目されたのは世界初の多臓器摘出体外腫瘍切除手術を成功させたことです。多内臓移植がご専門、つまり多内臓移植は一般的に,肝臓,胃,十二指腸,膵臓,小腸および,場合により大腸や腎臓を一槐にして同時に移植する手技のことで,肝臓を一緒に移植する場合は完全多内臓移植(full MVT),肝臓を同時に移植しない場合は多内臓移植変法(modified MVT)といいます。肺移植は単一臓器移植です。単純な比較はできませんが、完全多内臓移植は縫合部位が多く複雑です。
まあ、それはどうでもいいのですが、その加藤先生がコロナに感染されたわけです。先生は1963年生まれなんで、去年は57歳でした。私とあまり変わりません。彼はもちろん日本人ですが、感染状態は壮絶だったということです。

記事では入院翌日に急激に重症化し、ICU=集中治療室へ。人工呼吸器やECMO=人工心肺装置に繋がれ、生死の境をさまよった。
彼を襲ったのは、免疫の暴走、敗血症、クモ膜下出血。更に血圧が大幅に低下し続け、救命のため、昇圧剤が上限まで投与された。
その間、1か月は記憶が飛んでいるという。退院までは2か月を要し、「神の手」と称賛されるメスを握る右腕が、脊髄脳神経の麻痺により、肩から上がらない後遺症も続いた。

こんな恐ろしいコロナウィルス感染。。。今考えても日本のものとはウィルスの種類が違うんじゃないか?と思ったわけです。
そして、現実にはもう1年以上長引いて、変異株にて、さらに感染は拡大しています。ワクチンは日本はほとんど入ってきていません。
今、恐ろしいのは新・新・新型コロナウィルスです。欧州(英国)型や、南アフリカ型でブラジル型でなくインド由来変異株です。
スパイクタンパク質にL452RとE484Qの二重変異を帯びているB.1.617株ってやつです。二重変異株って呼ばれています。
4月26日に加藤官房長官が「二重変異株,国内21件 (空港検疫で20件,国内で1件)」と発表しています。これだけでも震えがきますが、さらにB.1.617 + S:V382L (三重変異),ならびにB.1.618 (ベンガル変異型)が出てきました。。。ベンガル変異型は西ベンガル州で感染拡大しているウィルスです。インドが今どんな状況かはニュースでご存じだと思いますが、いまだにインドから航空機が日本に来ています。

これ、、、冷静に考えてオリンピックできるのでしょうか?(そりゃ、個人的にはして欲しいとは思いますが。アスリートの努力もわかっているし。。    でも。。)オリンピックで様々な変異株が日本に上陸して、ワクチンが効果なくとんでもないことにならないかと。。。いまだに医療従事者以外のほとんどの日本人ワクチン打ってないんですけど。。。




コロナ患者の生体肺移植

  
ニュースに”コロナ患者に世界初の生体肺移植、夫と息子が提供…京大病院”という記事が飛び込んできた。コロナ感染中の患者に生体肺移植???と驚いたが、そうではなかった。コロナ患者と書いてあるが、コロナ感染を経験し肺が委縮し呼吸機能が落ちた患者であり、コロナに現在罹患しておるわけではないので、コロナ感染の後遺症での低肺機能患者に世界初の生体肺移植と記載する方が正確だがこのタイトルの方が、一般の人にはわかりやすいのだろうか。脳死肺移植症例の報告は世界でかなりあるようである。生体肺移植自体は脳死肺が慢性的に極めて不足(平均待期期間800日!)している日本では有用な移植法だと認識されている。技術的にも安定している。しかし死体肺移植と異なりドナーの生きたままの肺が必要で、提供者の協力が必要となる。今回の場合は夫と息子ということだった。生体肝移植もそうなのだか、一人きりの人はこの移植を、つまり臓器を提供して欲しいといえる人がいるのであろうか?それには自分の子供を多くと考えれなくもないが、子供が拒否する場合だってありうるだろう。しかも肺をもらう側の患者も元気で、年齢制限があるから、誰にでも提供できるものでもない。この手術はそれら問題点がすべてクリアになり、すべてが適応が合致した極めて稀なラッキー症例であるといえる。コロナ感染後PCRで陰性であること=本当に体内にコロナウィルスが居ないならないとは思うが、手術のタイミングはいつが適当なのだろうか?いずれにしても、移植で助かる人がいる素晴らしいにことは違いないのだが、助からない人が大多数いることも事実であり、外科医の限界といえなくもない。大多数の人にコロナ罹患肺を機能低下させないような薬剤が出ることを期待するが。。。IPの既存薬ではダメなんだろうなあ。

尊敬する外科医とは。。。

  最近、いろんな本に凄腕医師(といわれる医師もしくは自称)の紹介が出ています。そして、その医師は必ず、今までの過去を振り返った記事として、尊敬する外科医は〇〇先生です。とか〇〇先生が私を育ててくれた外科医ですとか言及されています。凄腕医師は大抵は手術の多い病院の部長とか大学教授で、様々な本に反復掲載されています。よく出ている人と出ていない人の差が激しいです。医者でない一般の人(患者さん)は、凄い!この先生に手術して貰いたい!とか思います。また、この凄腕医師が尊敬する医師はさらに神様かもしれないと思ったりします。しかし、同業者(同じ科の医師)の評価は異なることもよくあります。また、患者本人もいざ病院に行くとなんか思ってたのと雰囲気が違うなとか、マジでこの人が名医なの?とか思うこともあるようです。でも本に載っていたから大丈夫だろうといって手術を頼みます。このよくありそうな流れというかパターン。。。

 医師が患者の場合は少なくともそんな雑誌の紹介では執刀医を決めません。ある程度腕や噂を知っていますから。あなたが患者だとします。例えば肺癌で隣接臓器の一部に肺癌が浸潤しています。ちょっと若い医師には荷が重い感じです。こういう場合、誰に手術して貰いますか?どうやって手術して貰う医者を選びますか? とりあえず近くの大学病院に行きますか?これは患者が医者だったとしても、選ぶのはなかなか困難です。医師でも科が違えばどこに行くべきなのか、ほぼわかりません。同じ科であれば我々医師は学会などで、どういう医師がどういう手術をしてるかはぼんやり知っていますが、詳細は知りません。だから誰がベストなのかはわかりません。しかも、大病院でスタッフが多い場合は誰が執刀してくれるのか不明です。この先生に執刀して欲しいのにぼんくらの2番手が手術することなんて普通にあるからです。日本では基本的に執刀医を患者が名指しして指定することは出来ません。なぜなら、5年目の医師でも30年目の医師でも手術点数、いわゆる手術で稼げる報酬は同じだからです。A先生にして欲しいから頼んだのに、実際はB先生が執刀したなんてことは普通にあるわけです(患者自身は眠っていますから)。そこの正式な契約関係の締結は無いわけですから(口約束でなく、書面の契約などは普通は無いです)。A先生はB先生に執刀させて指導するという必要性も日本の医療では当然ありますし。だから、患者サイドからすると手術は普通にしてくれるだろうなという医者や病院を選ぶことくらいしかできないわけです。

 医師への取材では、あなたの尊敬する医者は誰ですか?という質問が来ることがあります。よくあるパターンは昔の上司とか留学先の教授とかを出すことが多いと思いますが、私の場合はいつもいないと話します。しかし、尊敬する人はいないけど、この人は凄いなと思う人は少なからずいます(手術数では決してないです)。可能なら私の上司になってもらって直接その手技を吸収したい。そう思うことはありますが、そんなこと出来るわけがないので、メールや電話で話しさせて戴きます。そういう医師は過去に3人いました。だだ、それは外科医として吸収したい手技を有している人であり、尊敬できる人なのかどうかは別問題です。なぜならその人のあらゆる事がわかる程は一緒に仕事や生活してないのが普通だと思いますので。その人を深く知っているわけではないですから、簡単に尊敬しているというのはかえって軽い気がします(甲子園球児が両親を尊敬するというのは好感が持てます)。手技に限れば、中でも特にその手技やデバイスを自ら産みだした人(海外の輸入でなく)は凄いと思います。時に私には、その手技は簡単にまねできないようなものもありますが、大抵は自分でやってみるとすぐに出来る手技が多いです。ただ、その手技は動画などを見たり説明してもらえばできるけども、それを思いつくことはできない。また、実践で勇気を持って行うことも難しいでしょう。そういうオリジナリティのある手術を持っている人は尊敬すべき対象なのかもしれません。ただ、手技だけでその人を尊敬できるかというとそんなことは無いですよね。。。ブラックジャックだって凄腕だけど性格はとんでもないところがありますから。性格ならドクターコトーのほうが尊敬できます。えてしてそういう人ってのは変な人が多いと決まってますから。ただ外科医としてその手技に尊敬すべきものがあるという人を尊敬の対象とするのならば、私には尊敬する医師はかなりいます。そういう医師と話をすることは本当に楽しく、自分の未熟さを理解することができます。

65歳からの外科医



Yahooニュースで心臓外科医の天野先生が定年後にどうするかというニュースを見た。

https://president.jp/articles/-/43708?page=1

 外科医がメスを置くというのは大変大きな決断であり、天野先生のように可能な限り手術をする、しようとする人も多い。かたや、大学病院などで肩書きが上の人はもう若い外科医に手術を任して、デスクワークに徹し、会議などのみで手術をほとんどしない人もいる。こういった場合は自分が手術しなくても多くの手術できる医局員がいるから任せるという意味と自分が手術できないかする自信や興味が無くなったという二つの理由がある。しかし、かたや一般病院はスタッフが大学病院のように多くは無い場合がほとんど(多くのスタッフがいる病院もあるが)なので、年をとっても手術をせざるを得ない。嫌でも、面倒でもしなければする人がいないわけである。天野先生は大学教授ながら65歳定年まで精力的に手術をされ、さらに自分の腕を世界に役立てようとされているので、やはり手術がお好きなんだろうなあと思う。凄いバイタリティである。しかし欧米では55歳くらいまでに大きな報酬を得て早期退職し悠々自適な生活を送る医師も多い。

流水腐らず、戸枢螻せず

(りゅうすいくさらず、こすうろうせず)

ということわざがある。常に流れる水は腐ることがなく、常に開閉している開き戸の軸は虫に食われることがない。常に活動し変化しているものには沈滞や腐敗がないというたとえ。同じ事を無意識に延々としている人間は腐っていくのだろうか。手術でもそうなのかもしれない。変化のない同じ手術を延々とすることは、確かにその手術技術は安定するのかもしれないが。それ以上の進歩は無いもしくは少ない。何より同じ事を延々と行うのは、たしかにそれは継続性という意味では大切なことだし尊敬されることではあるのだが、普通は面白くないし飽きてくる。そうすると後進に道を譲るということになるのかもしれない。何か新しい行動を取る。それは新しい手術への挑戦や現在行っていないことを行ってみるなどいろいろな意味があると思うが、同じ事をやっていると時間が早く経過するように感じることは真実である。学生時代の時の流れと40過ぎてからの時の流れは全く感じ方が異なる。あっという間に10年が過ぎている。。。外科医が手術のモチベーションを保つには”手術が好きだから”とか”患者さんに感謝される”という事以外にいろいろあるはずである。それは報酬でも良いし、自分を高めるための自由な活動でも良いし、他の自分にとって新しい何かでも、欧米のようにメスを置いた後の将来への夢でも良いだろう。

人生は1度しか無いというのは事実であるなら、何年も何も考えず水溜まりのごとく何かに縛られながら同じ仕事をして定年を迎えてメスを置くという外科医というのは最も悲惨なものなのかもしれない。。。そんなこと今まで考えたことは無かったが。

フライブルクの街並み



フライブルクという地名はドイツ国内に多くありますが、一般にフライブルクと言えばFreiburg im Breisgauのことをいいます。スイスにもFreiburg im Üechtlandというところがありますので、厳密には郵便などではFreiburg im Breisgauと書くべきでしょう。フランクフルトからICEで約2時間フライブルクHBF(主要駅)に到着します。ミュンヘンからだと4時間以上かかりますので、フランクフルト着の飛行機の方が便利。ミュンヘンからだと乗り換え多いんで。でもミュンヘン好きなんで、ミュンヘンに入る方が楽しいですね。フライブルクはドイツ屈指の日照時間で庭でレモンの栽培が可能らしいです。でも冬は雪が降りますから沖縄みたいに温かくは無いです。フライブルクの駅だけでなくドイツの主要駅には階段の横に荷物専用のエスカレーターがあるので、そこにスーツケースを載せると楽ちんなので好きです。日本ではエレベータかエスカレータならいいんですが、階段だとスーツケース抱えて上り下りしないといけないので、本当に重く不便。駅地下のパン屋でプレッツェルを見ると、ああドイツに来たんだと感慨深くなりますね。駅から出ると正面方向が旧市街Altstadtです。いきなり右手前に見えるのは近代的なコンサートホールKonzerthaus Freiburgです。交通量の多い横断歩道か陸橋を渡り、旧市街の入り口に入りどんどん歩いて行くとミュンスター(Freiburger Münster:フライブルク大聖堂)に到着します。このミュンスターいつもなんらかしら工事していて、今はタワー先端の方の工事で何か帽子かぶってるような形ですね。そりゃ、ケルンよりこじんまりしていますが何か気品が感じられて好きです。高さが116mしかないんですけど、周りが低いので大きく見えます。内部はステンドグラスなんかがあり素晴らしいです。この周囲の広場ミュンスタープラッツ Münsterplatz は日曜日以外は毎日市場が開かれて賑やかです。花とか、ブルスト(Brust:ソーセージ)とかシンケン(Shinken:ハム)とか野菜とかパン(Brot)とかなんでもかんでも屋台が出ます。クリスマスにはクリスマスマーケット(Weihnachtsmarkt)になりグリューワイン( Glühwein )とか工芸品とか、移動式遊園地とか何でもかんでも集まります。自分のアパートがsedan strasseにあり割と近く難なく歩いて行ける距離でした。大抵観光客はここを見て帰るわけですが(近くにコロンビホテルColombi Hotel: https://jp.lhw.com/hotel/colombi-hotel-freiburg-germanyという高級ホテルがある)、実は楽しいのはここから1本外れたトラムの通る道沿い、もしくは、もう少し山側に進んだ黒い森Schwarzwald側にあります。おすすめレストランはやはりDattler Schlossbergrestaurantでしょうか。このレストランは私の大学スタッフから送別していただいたレストランですが、眺めが素晴らしく料理も大変美味しい自分にとっては最高のレストランです。有名な Martin’s Brauなどビールは地ビールの店が多いのでビールが好きな人は楽しめると思います。 Karstadt Kaufhofというデパートの最上階でのすらおいしいです。また、5-6月ならやはり白いアスパラガス(Spargel)があるので、これははずせません。大学街なので若い住民が多く明るい雰囲気ですね。フライブルク大学病院は少し駅と反対側で離れていますが、大学は近いので入って受講しても若ければわからないと思います。旧市街はそんなに広くないので十分半日くらいでも回れるのではないかと思います。ただ私個人が大好きな建物はHerz-Jesu-Kircheです。完成度高い教会で緑のツインの屋根が素晴らしい。教会横の芝生の上で寝っ転がって寝ると気持ちいいです(治安は不安な感じですが)。





外科治療は今後必要になるのか

前立腺癌に対する小線源治。滋賀医大・岡本圭生医師がプロフェッショナルな仕事をしていたにもかかわらず職を追われた原因のひつとは病院の収入であったと言われている。

小線源│岡本圭生医師の治療、現在

知っての通り、前立腺癌の治療には現在ダビンチによるロボット支援下手術が一つの治療として確立している。しかし岡本氏の小線源治療はそれをはるかに凌駕する治療成績があり全国から患者が集まっていたようだ。その数1200例以上。当然小線源治療よりダビンチ手術の方が病院の利潤は高いので、病院としては利潤の高い治療をして欲しいと思うのはある意味当然だ。大学病院も独立法人化しているので、仕方が無いところはある。旭川医大の学長がコロナ患者を受け入れたくないのもなんとなく理解は出来る。理想と現実。 手術ではない治療法が再発率を下げ、生存率を上げ合併症も少ないとなると身体にメスを入れる必要は無い。が、そんな低価格の治療が広がると病院は困るし、手術担当する泌尿器科も困るわけである。やることがなくなり、おまんまの食い上げだ。しかし患者視点にたてば、当たり前だが小線源治療を選択したい。だから、そこは患者のためというのを第一に考えるべきだろうと思う。肺癌の治療が将来的に手術でない別の治療法により根治的な治療が出来るのなら、外科医は少なくて済む。100%いらなくなることは無いだろうが、補佐的な立場となるだろう。心臓外科が冠動脈のステントやTAVIが出たときに患者数が減るのと同じことだ。肺癌では最近の分子標的剤や免疫チェックポイントを含めた非外科的治療は大きく進歩している。それでもステージによっては外科治療ほど根治的な治療は今のところは無いのだが、将来的にはわからない。やはり、大学病院は独立法人化せずに、収入を考えないで研究したり、革新的な治療を経済的なことは無視してやるべきなのではないだろうか。

 

訪問クリエイティブ

手術で一番大切なこととは



肺癌手術にかかわらず癌の手術で一番大切なこととは一体何でしょうか❓

手術を受ける側の望むこと。それはまず癌をきっちり取ってくれて、いうなれば癌を根治させてくれるかどうか。そして同時に安全に手術してくれるかどうか。次に創の大きさや術後の疼痛など合併症を少なくなどでしょう。

医者側と患者側で、それがややずれていることなどがあります。現在では内視鏡手術はどの臓器の手術にも応用されて普通で安全のものになりましたが、胸腔鏡手術も出始めの頃は手術術式に関していろんな意見がありました。

まず危ない。ちゃんと肉眼で見なさい。リンパ節郭清が十分できない。創の大きさなど問題ではない。手で癌を触ってこそ局在がわかる。など様々な意見がありました。これら意見は決してまるっきり間違いとはいえません。しかし、今は呼吸器外科領域だけでなく、消化器外科も産婦人科も脳外科も心臓外科もありとあらゆる科で内視鏡手術が普通に行われています。なぜこんなに日本のみならず世界中で普及したのか?これは私は患者側のためというよりは医師側の利点、つまり術者が楽だからではないかと考えています。大きなモニターに映し出される臓器、血管は肉眼で拡大鏡をつけるよりもはるかに精密で見やすいです。しかも術者は首を曲げないでいいので本当に楽です。小さな創から首を曲げて覗き込む手術は本当に肩こりがひどくなります。たまに行う開胸手術の時でさえそうなりますので。また視野の統一性があります。術者だけでなく第一助手、第二助手、機械出しナース、手術に入っていない学生や外回りのナースまでもが全員同じ視野を見ているわけです。術者が何かおかしなことしてたら第二助手ですら、すぐに指摘できます。昔は第二助手以下は全くと言っていいほど術野が見えませんでした。。。悲しい現実でした。

ドクターY~外科医・加地秀樹  (ドクターXではない)

などは腹腔鏡の魔術師と呼ばれていますが、魔術師でない医者は必ずしも腹腔鏡手術の方が開腹手術よりも優れてるとは言えないわけです。つまり、技術が優れている人では内視鏡手術は開胸手術よりも手術を受ける側の望むことが大きく叶えられるけど、そうでない人では叶えられないということになります。

これは、かなりsevereな問題ですが、手術で新しい技術が出てきた時、その技術をすぐに自分で行って満足できる医師は少ないです。当たり前ですが learning curveは医師により異なるので、早くうまくなる人とそうでない人がいる。満足にできそうにない間は、患者さんには迷惑が掛からないように簡単に出来そうな腫瘍やリンパ節郭清をしなくてもいいようなものに限定するわけです。手術をするとき誰がするのか、その人はどのくらい経験があるのかはきっちり聞いておく必要があるでしょう。

 

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daVinci(ダヴィンチ)手術

ドラマでよく出てくるロボット支援下手術、いわゆるダヴィンチ手術ですが、この手術も呼吸器外科で行えます。ロボットが手術をしてくれるなら楽なのですが、手術するのはあくまでも医師であり、ロボットを利用して医師が手術します。いわゆるロボットに支援してもらって行う支援下手術です。この機器はアメリカで「軍医の分身」として開発されたものです。戦時下の野戦病院はベッドも医療機器も外科医も何もかも足りない。照明も麻酔も消毒も不十分な環境下で、戦場で重傷を負った兵士の命を遠隔手術によって助けることができないかというのが開発目的でした。しかし手術操作と機械とのわずかなタイムラグがあり、軍事医療から民間に転用されました。2000年にFDA(アメリカ食品医薬品局)から承認を受け、日本では2009年に厚生労働省から医療機器として承認されています。日本のダヴィンチの台数は米国に次いで多いらしいです。この機械は前立腺手術のような深く狭くそして範囲が限定された手術にはすごい威力を発揮します。細かな操作が可能で出血が少ないわけです。しかし、現段階の肺癌手術では胸腔鏡手術に比べて何が利点なのかはまだ不明です。孔の数が多い、コストが高い、出血時の危険性が高い、手術前後時間がかかるなど胸腔鏡手術にはない欠点があります。私が思う最もきつい欠点は触覚がないことです。視覚だけで縫合しなければなりません。逆に長所は手振れがない、鉗子の自由度が高い、3D視野が広いことでしょうか。つまり、奥深いリンパ節の郭清や腫瘍切除などに有利です。年を取った外科医にはこの上ない手術環境が得られます。ちょっと手が震えるけどダヴィンチならできる!と言って若手に手術機会を奪うようなことだけはしてはならないと思いますが、結果的には奪ってるんでしょうね。。。外科医は皆年取りますので。。。ただ、ダヴィンチ手術は胸腔鏡手術に比べてお金がかかります。特に手術数が少ない場合は。なのに日本では保険点数は全く同じです。保険がきくので患者側からすれば良いのですが、コストの点からは民間の病院はダヴィンチより胸腔鏡手術してくれと思っているのは当然です。大学病院ですら利潤を追求しないといけない時代ですから。ダヴィンチは私がドイツ留学していた2002年頃、イタリアでかなり流行っていましたが、ドイツでは全くしていませんでした。今でも限定された一部の病院だけのようです。(中国でもそうです。)しかし、その後イタリアでもコストの問題で下火になりました。同じ欧州なのにドイツとイタリアの国民性がよく表れています。

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胸腔鏡手術について

胸腔鏡手術とは胸部外科の内視鏡手術のことです。よく患者さんからは腹腔鏡手術でできますか?という質問が来ます。胸部は胸腔鏡、腹部は腹腔鏡ですね。私は今まで3か所に孔を胸部に開け手術をしてきました。1か所は3㎝、他は1.5~2㎝位です。ただ、この創だと取り出す肺(特に下葉ですが)が大きい場合、創を大きくしなければいけません。この手術の特徴は肋間を開排しないことと、モニターを見て手術することです。この手術にも欠点はあります。肺を取り出すとき肋間を開排すると、肋間神経が障害されて術後胸部の疼痛の原因になります。いわゆる肋間神経障害による痛みが続きます。この痛みは肋間に沿って起こりますので、孔から前方にお腹の真ん中まで痛みがあります。胃の痛みだと思って胃カメラしても異常なかったという人もいました。しかし痛みは開胸手術に比べて微々たるものです。次に術者がこの手術に慣れていないとストレスが大きいです。私も15年位前に行っていましたが、小さな創からモニターを見ないで肉眼で行う手術は死角ができて極めて危なく術者もストレスがかかります。同じ内容の手術なのに術者にストレスがかかる手術は廃れていきます。最近、この創を3つから1つにして肺葉切除を行う術者が増えてきました。いわゆるUniport、Single Port手術です。 私もその一人ですが、3カ所の創よりも1か所の創の方が理論上肋間神経障害が軽減されるのは理論的にはよくわかります。美容的にも申し分ありません。しかし、どうでしょうか。この手術。。肺葉切除だけならあまり術者はストレスはかかりませんが、リンパ節郭清に関してはまだ、改善の余地ありですね。また4㎝の1つの創からいろんな道具を入れて行う手術は意外にも疼痛が増加するかもしれません。ただ、こういうことは技術の向上と術者の慣れで解決されていくと思われます。開胸手術から胸腔鏡手術への移行の時もそうでした。これからの評価次第ではありますが、少なくとも、全ての患者に適応するのではなく技術オプションとして持っておくのは悪いことではないと思います。最も大切なのは安全、合併症を避けることを念頭に置いて。。。気管支形成や血管形成に万人が応用する必要は無いと思います。ただ、私も含めて年を取ると新しい手技を導入することが億劫になってくるのは事実ですね。この手技を導入しないからといって誰からも文句は出ないとは思います。少なくとも患者さんは安全に早く手術してほしいと思っているでしょうから。そういう意味では小開胸手術に慣れている人、胸腔鏡に慣れている人、Uniportに慣れている人は同一ライン上かもしれません。

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