”オリジナル” とはWikipediaでは
- 「独創的」・「独自のもの」という意味。 また、何かに加工されたものの元となるもの。特に、複写、複製等に対して用いられる。本項で詳述する。
- 既製品に個人や販売店などが加工や機能を追加したもののこと。誤った用法であるが、一般的に使われている。
つまり現在行われている手術のほとんどはオリジナルなものではない。しかし手技の細かなひとつひとつには、それぞれオリジナルがあると言ってもいいとは思う。大きな機械の中の部品一つ一つにもオリジナリティがあるのと同じである。精密機械であれば、部品それぞれに特許がある。それはWikipediaの2に相当するものもしないものも存在する。オリジナルであるのかそうではないのかという議論は手術や手技において重要ではあるが、そこに金銭的利害関係がない場合(普通はデバイスが絡まないとあまりない)問題にはなりにくい。しかし、学会などで自分が初めてその発表をしたのに他人にオリジナルかのようにさも初めて発表したかのように言われると、当の本人はいい気がしないのは確かである。また、多くの人が行っていて、どうでもいいような常識的なことをさもオリジナルのように発表する人もいる。こうなると精神的な利害は伴うかもしれない。だから、そういう場合は〇〇先生も発表されていますが~という言い方をする方が良いようなこともある。
しかし、もろ利害関係の発生する商品に関してはそうはいかない。ぱっと頭に浮かぶのはザッハートルテ(Sachertorte)である。ザッハートルテはご存じのようにオーストリアの有名なチョコレートケーキである。ウィーンに行かれたことのある人や興味のある人なら有名な話なのでご存じではあると思うが、実はザッハートルテには2種類ある。
ちなみにザッハートルテのレシピは、チョコレートバターケーキに、アプリコットジャムを塗り、チョコレート入りのフォンダンでコーティングして、仕上げに砂糖を入れずに泡立てた生クリームを添えるというもの。2種類のザッハートルテというのはオリジナルのザッハートルテを生み出した菓子職人フランツ・ザッハーのいた本家「ホテルザッハー」のものとオーストリア王家御用達の菓子店「デメル」のものである。いうなればデメルのザッハートルテは厳密にはホテルザッハーの方が早いのでオリジナルではなく、Wikipedia2に相当するのかもしれない。じゃあ、何が違うのかというと、基本的なレシピはほとんど一緒なんだが、アプリコットジャムの塗る場所が違う。「ホテルザッハー」のはアプリコットジャムがスポンジの中とチョココーテイングの下に塗られているのに「デメル」のものはスポンジの中には塗られていない。こ、これだけかい。。。。という感じなのだが。。どちらがおいしいかは個人差がある。個人的にはあの甘いケーキに甘酸っぱいアプリコットジャムがケーキのスポンジの中にも塗られている方が食感もいいし、味も甘さが緩和されスッキリして好きである。(これは完全に好みで変わる)これにウィーンナーコーヒーを合わせると寒いウィーンでは生クリームだらけの最強のデザートとなる。
この二つの違いはオリジナリティの存在をめぐって裁判になり、「ホテルザッハー」が勝利することになった。まあ、ザッハーって名前があるからなあ。。ただ、デメルはホテルザッハーが財政難の時に融資で助けているので、デメルが助けなかったらホテルザッハーは潰れてオリジナルザッハートルテも現存しなかっただろうと。。。裁判には負けたものの、歴史はデメルが好感が持てるので、食べるのはどちらでもいいかなと思う。デメルトルテに名前を変えて売っても売れないだろうか。。
つまり、真のオリジナルでもそうでないものでも行きつく先は、個人差でその価値が変わるものや、さらなる完成度の高いもので、特に医療であれば患者側にとって有用な利益のあるものであれば、あまりそこ(オリジナルであるかそうでないか)に焦点を置かなくてもいいのかもしれない。