肺癌診療ガイドライン2020



2020年度版の肺癌診療ガイドラインが出版されました。年々分厚くなってきます。

肺癌だけでなく悪性胸膜中皮腫や胸腺腫瘍も含まれています。エビデンスは確実性と推奨の強さで示され、A(強)からD(とても弱い)、1,強い推奨、2弱い推奨の組み合わせで表されます。また、委員会の合意率も同様に記載されます。しかしAの1で合意率100%なら文句なしなんですが、なかなかそうにはなりません。また、エビデンスレベルはCなのに推奨1とか、判断困難なものもあります。実地に沿ったエビデンスと言いましょうか。

臨床病期I期非小細胞肺癌に対して、ロボット支援下手術は推奨決定不能でした。利用できる器具が限られる、手術時間が長い、コストがかかる、しかしVATSや開胸と予後は有意差がないことが長期成績は十分でないものの報告があるということでした。これはしかたないかな。VATSは推奨の強さ2,エビデンスの強さB、合意率67%でした。つまり行うことを推奨した人は9人中3人、弱く推奨は9人中6人ということでした。これは委員によって大きく変わりますね。唸ったのは心膜浸潤のあるT3N0-1M0の非小細胞肺癌は合併切除を行うよう奨められるかというのがあります。推奨1,エビデンスC、合意率100%でした。術前に心膜に浸潤してるかどうかがわからないものも含めてるでしょうけど、手術して浸潤してたら、心膜切除しない人はいないと思うのですが。これが2,Dでも切除しますよね。。。ただ切除したら明らかに切除しない場合より予後悪いとなると、すべきではないということになりますが、これは臨床試験できませんよね。。症例数とか浸潤の程度とか差がありますので。まあ、ガイドラインとは言うなれば現時点での論文でのコンセンサスはこの程度だよいう補助的な知識として持っておく程度のものです。もちろん、この程度を知らないと逆のことして合併症起きたら無知による医原性合併症になりますから大切なことではあります。医療では白黒なかなかつかないことが多いですよね。人間相手ですので。エビデンスがない場合、自分なりに論文を読んで、そこをどこまで自分で考えて、踏み込んで行うかで差が出るのかもしれません。まともなエビデンスもないのにみんながやってるからこれでいいやって、何も考えずに右にならえ的にやる洗脳医療だけは個人的にはしたくないですね。それがスタンダードな治療では無い以上は。興味があったり、経験上ある程度確証があればやると思いますが。しかし、将来的に外科的治療が不要になる時代が来るかもしれません。

 




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